Nintendo Direct: Nintendo Switch 2 - 2025.4.2
4月2日、ついにNintendo Directにてスイッチ2の詳細情報が発表されます。
さまざまな事前情報が飛び交う中、私が注目しているのはこれです。
コントローラーがマウスモードになるのではないか、という情報ですね。
特に興味深いのがこの画像
これが本当に実装されるのであれば、革新的なプレー体験の創出になると言えるのではないでしょうか。
マウス両手持ち・・・w
慣れるのが大変そうですが、いままでにない操作感が楽しめそうです。
実は右側のコントローラーのRボタンにはホイール機能が実装されていて、マウスのようにグリグリと動かせるのであれば尚よいですね。
そして、左側のコントローラーはこれとは別に、キーボードのような外付けコントローラーが出てきてほしいです。
そうなると、完全にPCゲームで遊ぶような、いわゆるキーマウ操作がスイッチで体験できるようになります。
夢が広がります。
キーマウ操作は習得するのが結構難しく、私自身何度もPCゲーム参入を試みては挫折しています。
PCゲームで操作する場合は、右手はマウスを使ってエイムや攻撃、左手はキーボードを使って移動系操作をするのですが、これが両方とも難しいのです。
特に苦手に感じるのが左手のキーボード操作。
上下左右がキーボードのWASDに割り当てされていて、それを人差し指、中指、薬指で操作。さらに小指や親指でコントロールやらスペースキーやらでジャンプしたりしゃがんだりと、なかなか難しい。
パッドと呼ばれる普通のゲームコントローラーに慣れているコンシューマーゲーム勢にとって、このキーマウ操作を習得できるかどうかが、PCゲーマーへの登竜門となっているのです。
スイッチ2がその足掛かりとなるような、PCゲームゲートウェイとしての役割を果たそうとしているのであれば、我々コンシューマーゲーム勢にとって非常に歓迎すべきものとなります。
スイッチ2でマウスモードを出す、というのはそういう狙いがあるのではないかと思っているのです。
任天堂が得意なこと
任天堂は既存のジャンルを新しく仕立て直して世の中に生み出すことを得意としてきました。
たとえばスプラトゥーン。
これは、当時ガチめの戦争ゲームというジャンルであったFPSやTPSを任天堂流に解釈し、原則的なゲームの骨組みはそのままに、操作性や世界観、システムといったガワの部分を再構築。
ガチゲーマーでも楽しめるゲーム性を保ちながらも、ペンキの水鉄砲でイカちゃん達が塗り合うという、アイコニックなキャラクターとポップでカラフルな世界観を通してTPSを仕立て直したわけです。結果、多くのゲーマーにとって敷居の高くなっていたFPSやTPSといったジャンルの参入障壁を下げ、たくさんのライトユーザーをこのジャンルに取り込むことに成功したわけです。
マリオカートやスマブラもそうです。
レーシングゲームや格闘ゲームといったコアになりすぎたゲームジャンルを任天堂が仕立て直すことで、新たなユーザーを取り込んできました。
今回、スイッチ2の発売を通して、任天堂はハードにおいてもそれを成し遂げようとしているのではないか。
PCゲーム市場への参入です。
任天堂とPCゲーム
任天堂はこれまで一貫してハード・ソフト一体型ビジネスに注力してきました。現社長の古川俊太郎氏も「今後もハード・ソフト一体型のゲーム専用機ビジネスを継続していく」と述べており、自社ハード上でソフトを展開する戦略を堅持する方針を示しています。
2024 年 3 月期 決算説明会(オンライン) 質疑応答(要旨)
実際、任天堂は自社の人気IPを他プラットフォームに直接展開することには慎重で、従来他社ハードやPCで任天堂公式のゲームを遊ぶことは稀な状況ではあります。
ですが、今がそうだから未来永劫そうだとは限りません。
ゲーム業界の主要企業のPCプラットフォーム参入
近年、ゲーム市場においてPCプラットフォームが無視できない存在感を持ち、競合他社が次々とPCに参入しています。ゲーム業界の主要企業は近年、コンソールとPCの垣根を低くする戦略を進めています。特にMicrosoft(Xbox)とSony(PlayStation)の動きは顕著です。
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Microsoft (Xbox): マイクロソフトは自社タイトルを発売日からPCとXboxの両方でプレイ可能にする戦略に舵を切っています。フィル・スペンサー氏(Xbox部門責任者)は「どのゲームも囲い込む理由はなく、遊びたいプラットフォームで提供するのが我々の戦略だ」と述べており、事実『Starfield』など従来ならコンソール独占となり得たタイトルもPCで同時提供しています。また、自社サービス「Xbox Game Pass」をPCにも展開し、PCとコンソール間の壁を意識しないビジネスモデルを推進しています。このように、Microsoftはプラットフォームの枠を超えてIPを広げる戦略で、PCゲーム市場でも存在感を高めています。
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Sony (PlayStation): ソニーも近年はPC展開に踏み出しており、『Horizon Zero Dawn』『God of War』『Marvel’s Spider-Man』などのヒット作を相次いでPC移植しました。尤も、基本戦略としてはコンソール時限独占を維持しており、PlayStation Studiosのトップであるハーマン・ハルスト氏は「今後、ファーストパーティタイトルをPCに出すまで少なくとも1年は間隔を置く」と述べています。これはまずPSプラットフォームでコミュニティを盛り上げ、コンソールの価値を担保しつつ、一定期間後にPCで追加売上を得るモデルです。ただし、オンラインマルチプレイ前提のライブサービスゲーム(例:『Destiny』など)については「初日からPCとコンソールで同時展開し、ユーザーコミュニティを広げることも検討する」としており、この分野では即時マルチプラットフォーム化を進める方針です。
つまりソニーはタイトルの性質に応じてPC展開のタイミングを戦略的に使い分けており、コンソールの優位性とPC市場からの収益拡大を両立させようとしています。
PCゲーム市場を語る上で欠かせないのがSteam
Steamは世界最大のPCゲーム配信プラットフォームであり、1億人以上のアクティブユーザーを抱えています。事実上PCゲーム市場の流通を握る存在で、サードパーティの大作からインディーゲームまで膨大なタイトルが配信されています。任天堂が仮にPC参入する場合、Steamとどう向き合うかは大きな論点です。他社のようにSteam上でゲームを販売すれば一気に巨大市場にアクセスできますが、その場合は収益の一部をValveに手数料として支払う必要があります(通称ストア税、30%!)。
よって、任天堂クラスの企業であれば自社専用のPCゲームプラットフォーム(ランチャー)を構築し、直接ユーザーに販売する道を選ぶ可能性が高いのではないでしょうか。例えば、過去にEpic Gamesが自社ストアを立ち上げて成功した例もあり、任天堂がPC参入時に同様のアプローチを取ることは十分考えられます。
スイッチ2は任天堂がランチャーを構築するための布石
冒頭の話に戻ります。
2025年2月、任天堂が出願した新型Joy-Conに関する特許が公開されました。この特許では、Joy-Conをコンピュータのマウスのように操作できるモードが詳述されています。
具体的には、Joy-Con底面にレーザーなどのトラッキングセンサーを搭載し、机など平面上でジョイコンを滑らせることでポインタ操作が可能になるというものです。Joy-ConのZR/ZLなど肩ボタンがマウスの左右クリックに相当し、アナログスティックもマウスモード中でも機能する設計が示唆されています。任天堂が公開したスイッチ2のティザートレイラー映像内でも、Joy-Conを平面でスライドさせるシーンが一瞬描かれており、このマウス機能を示唆していると世間で騒がれました(X界隈)。
このJoy-Conの“マウス操作”モード特許は、PC的な操作体系をコンソールに取り込む試みとも解釈できます。従来、家庭用ゲーム機で細かなポインタ操作が必要な場合、Wiiリモコンのようなポインタ機能やタッチスクリーン、あるいはスティック+ジャイロ併用で代替してきました。しかしマウス操作は依然PCゲームの代名詞であり、特にFPSやRTSなどではマウスの精密なエイミングが求められます。任天堂がJoy-Conでその操作性を再現できれば、コンソール機上でもPCに近いユーザー体験を提供できるでしょう。これは単にスイッチ2上での操作性向上に留まらず、将来的に任天堂が自社ゲームをPC展開する際にも役立つ素地となり得ます。たとえば、自社タイトルにマウス操作対応のUI・操作設定を盛り込んでおけば、PC版への移植がスムーズになる可能性も考えられます。Joy-Con自体もBluetooth接続機能を持つため、公式にPC対応ドライバが提供されればPC用周辺機器として機能する余地もあります。
そして何より、キーマウ操作が障壁になっている多くのコンシューマーユーザー(PADユーザー)をスイッチ2のマウスモードで育成することができれば、それはPCゲームにとって、大量の新規ユーザー獲得につながると言えるのです。
この構造は、任天堂がこれまで繰り返してきたゲームジャンルの解釈と仕立て直しと同一構造となります。
ライトユーザーの参入障壁がどこなのか、何を解決すればそれが取り払われるのか、何を追加したら興味が向くのか。任天堂は、そうした課題発見と解決のアプローチにより、数多くのゲームを作り出してきました。今回それをハードに対しても行うのではないかと思うのです。
もっとも、特許はあくまで「そうした技術の可能性」を示すものに過ぎず、任天堂が公式にこの機能をPC連携用途に言及したわけではありません。またそれはPCゲーム参入を公式発表するまで言及されることもないでしょう。現段階ではスイッチ 2の新機能として実装される蓋然性が高く、据置モードでモニターに出力しつつJoy-Conをマウスのように扱うなど、コンソール内での利用が主眼だと思われます。しかし、Joy-Conのマウス機能特許は、任天堂が操作体系の面でPCとコンソールの垣根を下げようとしている兆候と私は考えました。希望的観測込みで…。
大胆な変更が予想されるスプラトゥーン4
そして、キーマウ操作のキーIPとなるのがスプラトゥーン4ではないかと思うのです。
『スプラトゥーン』シリーズは任天堂の人気シューティングIPであり、その独創的な塗り合いバトルは世界的にも高い評価を受けています。現在は任天堂ハード独占タイトルですが、もし任天堂がPC市場に進出する際には、このようなオンライン対戦型シューターは有力なコンテンツ候補になるでしょう。特にスプラトゥーンは若年層からコアゲーマーまで支持されており、PCゲーム市場のシューティングファン層すら取り込む潜在力があります。
スプラトゥーンはもともとジャイロエイム+スティック移動というスイッチならではの操作体系を採用しています。トッププレイヤーの多くはジャイロ操作を活用しており、スティックのみより素早く精密なエイムが可能です。一方でPCのFPSプレイヤーにとってはマウス&キーボード操作が標準です。Joy-Conのマウスモードが実現すれば、スプラトゥーンにマウスエイムが導入されるかもしれません。
スイッチ 2でのマウスサポートにより「スプラトゥーン(将来的には『スプラトゥーン4』)が恩恵を受けるだろう」と予測した記事もあります。
もっとも、現行のスプラトゥーンの操作体系は左スティックで移動、右スティック(またはジャイロ)でカメラ操作という二本のスティック前提で設計されています。例えばマウス操作で照準を動かしつつ、キーボードなどで移動・その他操作を行うには、ゲームデザイン側での対応が不可欠です。
しかし、スプラトゥーン3で数多くの課題や行き詰まり感が生じていることは事実。そうしたものを突破できるのがキーマウ操作への変更と、それに伴うデザイン面の大幅刷新です。
おそらくスプラトゥーン3の延長線上で4を発売したとしても多くの新規ユーザーは見込めず、既存ユーザーでさえ一定数の離脱が生まれそうです。キーマウ操作への大胆な変更は大きな賭けではありますが、スプラトゥーンシリーズをさらに息の長いIPへと成長させるきっかけにもなりえると考えます。
場合によっては、スプラトゥーンをTPSではなくFPSへ変更する、くらいの大胆な変更があっても不思議ではありません。
Joy-Conのマウス対応という技術的布石を活かし、スプラトゥーンをマウス最適化する日が来れば、それはすなわち任天堂のPC市場参入がいよいよ現実味を帯びてくると言えるのではないでしょうか。スプラトゥーンのような人気シューティングIPは、マウス操作への最適化が図られれば、それを経験した多くのゲーマーがPCゲームへ参入することが可能となり、さらに既存のPCゲーマーからもそれは歓迎される可能性が高く、任天堂がPC市場に打って出る際の切り札になり得ます。
こうした仕掛けをせずにPCゲーム市場へと参入しても、多くの任天堂ユーザーはついていくことができません。キーマウ操作ができないからです。よって、市場参入は失敗します。
しかし、スイッチ2を皮切りに、スプラトゥーン4を通して既存の任天堂ユーザーをキーマウ操作に慣れさせて、PCゲームのポテンシャルユーザーへ育成したところで、任天堂は満を持して自社専用のPCゲームプラットフォーム(ランチャー)を構築することができれば、任天堂のPCゲーム市場参入は成功を収めることができるのではないでしょうか。
おわりに
任天堂は自社ハードで強固なエコシステムを築いているため、現状で売上やブランド力が不足しているわけではありません。よって、やむなくPC市場に参入せざるをえない状況ではありません。
ただ、ゲーム市場全体の成長やプレイヤー嗜好の変化を考えると、将来的に任天堂もPCを含むマルチプラットフォーム展開を検討していることは確実だと言えるでしょう。テレビを持たずPCだけ所有する層が増えるなど環境は着実に変化しています。任天堂が主戦場としている国内マーケットも大きな成長は見込めません。業界全体がクロスプラットフォーム化に向かう中、任天堂も今時点では無いとしても、近い将来マルチプラットフォームへと舵を切る日が来るのではないでしょうか。
それはいつになるのか。
私はスプラトゥーン4が発売された2年後、つまり今から3年から4年後くらいになるのではないかと予想します。
それが実現されたら、私も過去幾度となく挫折してきたキーマウ操作にしっかりと慣れ、立派なPCゲーマーとして羽ばたけるのではないかと思うのです。
以上、スイッチ2にマウス機能が実装されるうわさから止まらなくなった希望的妄想をしたためてみました。
いずれにしても4月2日の発表が楽しみですね!